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現場到着時、出火建物全体が炎に包まれ、さらに隣接建物に延焼拡大中であり、付近一帯は火炎による輻射熱のため消防車両の通過は困難を極め、さらに路上駐車をしていた一般車両により、迅速な水利部署に支障をきたす状態であった。
(二)消防活動の状況
第一出動隊は直近水利である出火建物北東側の防火水槽に部署し、二線を延長して延焼建物の火勢鎮圧と延焼阻止活動を開始した。一時○○分、次々と現場到着する消防団隊との連携を図るべく現場指揮本部を設置、各隊を指揮するとともに現場の情報収集にあたった。その結果、出火建物は空家と判明、延焼した住宅からの全員避難を確認したので消火活動に全力を傾注した。
第二出動隊のうち牡鹿出張所タンク車隊は出火建物南側高台に部署、女川消防署ボンプ隊は先着隊を支援、包囲体制をとりながら防ぎょ活動にあたった。
後続の消防団隊は、海岸に部署、現場指揮本部の指示の下、防ぎょ線全方位に筒先の配備を図り火勢の制圧を開始、一時二〇分火勢鎮圧に成功、覚知から一時間近くにわたる防ぎょ活動の結果、一時三四分鎮火に至った。’

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四 教訓と今後の対策
今回火災に遭った地区は、明治二〇年に、山林火災から延焼して全戸を消失しており、このいまわしい教訓を踏まえて、普段から住民の防災意識の高揚を図ってきたところである。
(一)延焼拡大に至った経緯
傾斜地に木造住宅が密集しており、火災が発生すると一気に延焼拡大する地形であるうえ、深夜の出火のため、発見が遅れたこと。また、頼みの地元消防団員の多くが漁に出ていたこと。
さらに現場が、管轄する牡鹿出張所から約五・四?q(走行距離)離れており、半島特有のつづら折りの道路だったため、覚知から現場到着まで約九分を要したこと。また、現場付近では恒常的に路上駐車がされており、出火当日も出動車両の通行の妨げになったこと等である。
(二)今後の対策
ア 離島、半島部等現場到着まで時間を要する地域における消防団との連携訓練の充実。
イ 路上駐車防止対策。
ウ 空家管理の徹底。
今回の火災は、懸命の消火活動にもかかわらず、八棟が被災する結果となったが、この火災を教訓として、地域の実態に即した訓練を更に充実させ、消防職・団員一丸となって火災をはじめとするあらゆる災害に対応していかなければならないと心を新たにした。
(阿部仁宏)

 

 

 

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